6月13日(月)第2回公開質疑(院内集会)「いのちを守る避難対策を」概要報告/杉原浩司

 参加者は約200人。前回は約250人でしたので減ってはいますが、それでも大勢の参加がありました。広報期間が短かったことも考えると、関心が薄れていないことの表れだと思います。

 当日は、初めに市民の事前討論(学習会)を行いました。まず、槌田敦さん(元名城大学教授)が事故の実態や原子炉の状況などについて解説。続いて、ミシェル・リヴァジさん(欧州議会議員、フランス緑の党、民間放射能監視団体「CRIIRAD」設立者の一人、元グリーンピース・フランス代表)が発言(通訳は真下俊樹さん)。

 「チェルノブイリ事故後にフランス政府が『全く影響はない』と発表したため、住民はEU基準を超える汚染食品を食べてしまった。訴訟を起こすまで20年かかったが、現在法廷で責任を追及している。フランスは年10ミリシーベルト(外部被曝)が避難基準だが、10ミリでも子どもには高い。高濃度汚染地域からできるだけ早く避難させるべきだ。20ミリシーベルトの子どもへの適用はやめてほしい。日本政府が提案している表土の天地返しは悪い解決策。地表の土壌をはぎ取り、福島原発敷地内(ないし周辺)に中間貯蔵すべき。放射線の影響にしきい値はない。地域の人々を被曝から守るために負担を負うべきは東電や日本政府だ。」

 公開質疑では、稲見哲男、平山誠、服部良一各議員のあいさつに続いて、まず現行の避難区域の拡大について議論。当局は「避難基準の20mSvはICRP(国際放射線防護委員会)の『緊急時』の参考レベルの一番下をとったものであり、安全側に従った対応」「対策の目安としては子どもと大人は区別されていない」と説明。これに対して、崎山比早子さん(医学博士、高木学校)は、「山下俊一長崎大教授(福島県アドバイザー)は論文で子どもの甲状腺や心臓、内分泌腺への放射性物質の蓄積量は大人の2~3倍と書いている」と反論。

 当局の「政府の緊急事態宣言が解除されるまでは『緊急時』の20mSv基準を適用」との答弁に会場も含めて批判が噴出。「緊急時と言うが既に3ヶ月が経ち、被曝させられながらの日常生活が続いている」「自主避難する人に対して、なぜ東電や政府は補償しないのか」「ICRPは汚染地域で生活、労働している状態を『現存被曝』と定義しており、『緊急時』ではない。基準は1~20mSvの下方にとるべき」「公式答弁を繰り返すのではなく、自分のこととして考えてほしい」「長期化を前提とした避難として組み立てられていない以上、もう一度見直しする時期だ」。

 前半に時間を費やしたため、後半の事故拡大時の緊急避難体制の整備、海洋汚染などの質疑は不十分でした。それでも、極めて不十分な避難体制の問題点と課題はより明確になったと思います。
 今後の課題としては、避難体制の根本的見直し議論の開始と、少なくとも10mSv基準への避難範囲の拡大、自主避難者への費用負担をさせることなどが挙げられます。次の展開をどうすべきか、今回の反省を踏まえながら議論していきたいと思います。当日のスタッフの皆さん、参加者の皆さん、お疲れ様でした。

※事前に行った資料請求に対しては、今回も前回同様に質疑当日の午前中に資料が届くという有様でした。内容は不十分でしたが、前回よりは誠実に回答している印象です。資料は近日中に共同デスクのウェブサイトに掲載予定です。

◆当日参加された方、またUstream中継を見られた方には、ぜひ率直な感
想や今後へ向けた意見を出していただきたいです。

◆なお、公開質疑の反省会議を【6月24日(金)午後1時より】服部良一議員事務所(衆議院第2議員会館505号)にて行います。平日昼間の集まりにくい時間ですが、プロジェクトの皆さんだけでなく、ご関心のある方はご参加ください。

 

当日の取材メディア、参加議員・当局の一覧

【取材】
共同通信(科学部)、読売(社会部)、東京/中日(社会部)、
河北新報、サンデー毎日、しんぶん赤旗、フリー(4人)、
ミシェルさんに同行の映画撮影スタッフ(フランス)

【Ustream中継:後日アーカイブが掲載されたらお知らせします】
岩上チャンネル

【議員本人(会派)】
[呼びかけ議員]
服部良一(社民)、平山誠(民主)
[参加議員]
稲見哲男、石田三示、平山泰朗(以上、民主)、糸数慶子(無所属)

【秘書のみ】
初鹿明博(民主)、福島瑞穂、又市征治(以上、社民)、
小熊慎司(みんな)

【当局】
<経済産業省>
前川之則課長(経済産業省 原子力・安全保安院 原子力防災課)
氏原拓課長補佐(原子力災害対策本部 ERCプラント班)
茶山課長(内閣府 原子力被災者生活支援チーム)
田邊補佐(同上)
竹永補佐(同上)
柴辻補佐(同上)

<文部科学省>
[科学技術・学術政策局]
澄川雄(原子力安全課防災環境対策室 室長補佐)
村山綾介(EOCモニタリング班 課長補佐)
寺坂公佑(産業連携・地域支援課 地域研究交流官)

<原子力安全委員会 事務局>
栗原潔(管理環境課 課長補佐)
藤元憲三(管理環境課 技術参与)
佐々木潤(規制調査課 規制調査官)