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<<   作成日時 : 2011/09/18 13:15   >>

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 2011年9月18日(日)記

 福島県選挙管理委員会は9月8日、震災と原発事故のために4月の統一地方選から延期していた県議選の日程を、11月10日告示、選挙期日11月20日にする、と発表した。特例法で一時は9月22日が延長期限とされたが、県内外への避難者が多いため、それをさらに延長していたものだ。

 だが、7カ月延長しても、この県議選は異例ずくめにならざるをえない。

 たとえば原発立地町を抱える双葉郡選挙区。ここには福島第一原発の立地町である大熊、双葉、第二原発の立地町である富岡、楢葉のほか、広野、浪江町、川内、葛尾村が含まれている。

 その多くが、全住民避難か、緊急時避難準備区域などに指定され、自主避難をしている人々が多い自治体だ。この選挙区では前回2007年が有権者約6万人、投票率66.17%、前々回2003年が有権者約6万人、投票率63.08%だった。

 今回の選挙で、県選管は選挙期間を1日延長して10日間とし、市町村選管を通じて県内外の有権者5万世帯に、告示前には不在者投票の仕組みを、告示後には選挙公報を送り、ホームページにも公開するとしている。


 だが、実際の選挙運動はどうなるのか。

 たとえば、通例なら候補者は、南相馬市にある県相双地方振興局で選挙に使う選挙事務所の標札、拡声器の表示板、腕章、街頭演説用の標旗などの「七つ道具」を受け取り、地元警察の確認のもと、街頭へと繰り出すことができる。

 従来なら、いわき市から約60キロの南相馬市へは、沿岸部の国道6号を使えば楽々と行くことができた。しかし事故後、国道6号は閉鎖されており、いわき市から南相馬市へは、郡山や福島経由で大迂回するしかなくなった。

 そのうえ、地元の双葉署は川俣町へ避難しており、さらに南相馬から引き返さねばならない。他方、供託金はいわき裁判所に預けるので、また一苦労だ。

 だが、手続きが済んだからといって、通常の選挙運動ができるわけではない。地元は警戒区域などで人が住んでいない。双葉町のように、埼玉県加須市や猪苗代町にまとまって住んでいれば、まだしも訪ねることができる。しかし、多くの町村では、多数の避難所から仮設へ、さらに借り上げ住宅にと分散しており、所在はつかめない。

 通常であれば、住民基本台帳から選挙人名簿がつくられ、名簿は手書きで書き写すことができたが、今回は今のところ、選挙人名簿は作られないらしい。

 普通の選挙では、選挙カーでウグイス嬢が候補者名を連呼し、選挙事務所を拠点に運動員が選挙を盛り上げ、電話をかける。しかし、選挙カーで仮設に行っても効果はないし、ウグイス嬢の連呼は、仮設では迷惑きわまりない。第一、県外の避難民を訪ねるのに、途中の走路で、地元署の許可はいらないだろうか。
 選挙事務所も、地元に置くならともかく、避難住民が多い、いわき市に置いても効果はないだろう。

 こうして候補者は、五里霧中で選挙戦をたたかうことになる。どんなに不在者投票を呼びかけても、投票率が下がることは避けられないだろう。県選管は、県内外の仮設住宅に投票箱を置くことを検討しているが、首都圏や全国に散らばる避難住民すべてを把握することは困難な情勢だ。

 双葉郡選挙区から立候補を予定しているある候補は、「ともかく、仮設住宅をあいさつ回りして、誠心誠意、住民の悩みや不安、希望に耳を傾けるしかない」という。

 中央の政治家は、口をひらけば「まず地元で民意をまとめてほしい」という。だが多くの被災地では、住民が分散し、とりわけ福島では、その「民意」を束ねる選挙戦ですら、こうした苦難を強いられているのである。そのことを、知ってほしいと思う。


 写真は、いわき駅近くにある映画館の玄関前にある表示板。「本日の放射線量」が、毎日表示されている。






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