2011年5月22日(日)記 県内外に散り散りになった南相馬市民を支えているのは、市役所職員だけではない。 県外からの応援組が次々に入り、疲弊した行政を支えている。 大谷(おおがい)和夫・市長公室長(59)によると、最も早かったのは富山県南砺市で、3月25日から3〜4人の職員が3泊4日交代で応援に入り、ご遺体の遺留品の管理などをしてきた。南砺周辺では江戸末期の飢饉で数千人がこの地方に移住してきた歴史があり、かねてから文化交流が続いていたという。 以前から災害時相互援助に関する協定を結んでいる東京・杉並区は、第一陣が4月8日から15日まで5人。第二陣が5月9日から7人を送ってきた。復興計画づくりに3人、物資の仕分けに3人があたる。 杉並区は、新潟県小千谷市、北海道名寄市、群馬県東吾妻町と災害時スクラムを組んでおり、その縁で名寄市が5月23日から3週間、2人の職員を送ってくることになった。 4自治体の首長は15日、南相馬市で会合を開き、災害救助法を改正して、国の財政支援を明確に規定するよう国に要請することを決めた。 「今の災害救助法は国ー県ー市という縦の支援を前提にしている。しかし、今回のような広域災害では、都道府県を越える基礎自治体の連携がなければ、復旧はおぼつかない。避難者受け入れや人的・物的支援にしても、今の仕組みでは財政の支援がえられない。なんとか国に要望したい」と大谷氏はいう。 ほかに、県が調整に入り、都庁が5月16日から2週間、10人を送ってきた。避難者の所在確認が主な仕事だ。地道だが、大切な基礎資料づくりになる。一行は、たまたま私のいるビジネス・ホテルに滞在しているという。そういえば、疲れきった様子のそれらしい人々を見かけた。 驚いたことに、中央省庁からも応援があったという。空席だった副市長に、総務省から村田崇さんが派遣され、アパート暮らしをしているという。ほかに4月中旬、経産省などから3人が情報収集などで市長を補佐し、保安院からも1人応援が来て、避難計画の策定やモニタリング作業を手伝っているという。 「これは助かりました。中央省庁の文書は解釈が難しい。言葉の裏を読み取って、この文言ならこういう要望を出せば通る、といったことまで、助言をしてもらえます」 ふつう中央省庁の派遣職員は県庁所在地に陣取って、地元要望をはねつけるイメージが強いが、今回はちょっと様子が違うようだ。中央縦割りでは、とても対処できないという現実感の表れなら、評価していいことのように思える。 「政府は半径20キロ、30キロという線で区切って一律に規制したが、もう少し弾力的に運用してほしい。勤務は妨げないというが、緊急時避難準備区域の生活基盤を確立するよう、ここに仮設住宅を作ること、入院を認めるよう政府に要望しています」と大谷さんはいう。 内閣府の沖縄担当部局から来たという村田崇副市長(36)にお目にかかった。 「お住まいは?」と尋ねると、「この近くのアパートを借りました。最初、30キロ圏外から通っているのではないか、と あらぬ疑いをかけられましたが」といって泰然とほほえむ。 「4月25日に赴任しました。人事を伴う異動で、あまり例はないようです。私の仕事は、庁内を事務方トップとしてまとめていくことです。たとえば市長はこれまで、お忙しいので、市民の避難先の自治体にお礼をいいに出かけることすらできなかった。今、自治体を回っていますが、そうしたこと一つとっても、事務のとりまとめで市長をお助けすることができると思います」 「私は常々、大切なのは住まいと仕事、と申し上げています。半径20圏内には住めない。戻ってこようにも仕事がない。借り上げ住宅を認めているのだから、緊急時避難準備区域にも仮設住宅を作らせてほしい、と国に要望しています。入院についても同じ。住民にとって、医療不安は大きい」 「政府は屋内退避を解除したが、そのいい振りがまずい。もう帰ってきていい、一部の人々は生活していいんだと、はっきりいうべきです。避難先で、まだここでは屋内退避が続いていると思っている住民が多いのではないか」 発言は率直であり、しっかり相手の目を見て話す人だ。 「旧自治省系として宮崎と長崎に出向した経験があります。自治体から見ると、中央の人々は現実感覚を知らず、理屈を捏ね回しているように感じられることがあります。いろいろな壁がありますが、スピードも壁のひとつです」 原発事故の縮図ともいえる南相馬市。そこで早朝から一日13、4時間勤務するという得若き副市長に、期待したい。 写真は上から 1 大谷和夫・市長公室長 2 村田崇・副市長 |
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